『軍事民論』第748号(2025年3月5日発行)…13頁
島嶼奪回作戦―上陸作戦と対機雷戦の紹介 〔解説〕島嶼を占領された場合に速やかに上陸・奪回・確保するための本格的な水陸両用作戦を行うことを任務として創設された水陸機動団。同団の演習や訓練をメディアが報じる際には「台湾有事を念頭に」が枕詞になっている。
その一方でメディアは、台湾有事に際して水陸機動団がなぜ島嶼を奪回(メディアは「奪還」と呼称するが陸自の正式用語は「奪回」)しなければならないかについては沈黙している。
逆に言えば、台湾有事で中国軍がなぜ日本の島嶼を占拠するかということだが、この問題について陸上自衛隊隊内誌で最も早く警鐘を鳴らした藤井 祥一 1等陸佐「沖ノ鳥島の戦略的価値とその利用-中国の海洋における活動範囲の拡大とグアム防衛-」(『陸戦研究』2007年11月号掲載)は、以下の通り説明している。
中国が台湾武力統一を行う場合、可能な限り米国が介入する前に作戦を終わらせる必要がある。このため中国は米軍を台湾周辺に展開させないこと、米軍の展開よりも早く台湾を占領することを企図し、弾道ミサイルによる攻撃に続き大規模な航空攻撃を行うと考えられる。この時点で台湾の戦力の大部分を撃破することができれば大規模な上陸作戦を行わなくとも早期講和・台湾統一への可能性がある。
しかし中国が台湾東岸の政経中枢、軍事施設等の破壊に失敗し、台湾に中国軍上陸部隊を迎え撃てる戦力が温存された場合、米軍の展開以前に台湾を統一することが困難となる。これを防ぐためには台湾東岸に対して直接的に航空攻撃を行うための手段が必要となる。台湾空軍の迎撃を避けつつ航空戦力を台湾東岸に集中するために、中国軍が我が国の先島諸島、特に宮古島と下地島にある2ヵ所の空港を奪取してくる可能性がある。
こうしたシナリオを念頭に水陸機動団は島嶼の奪回作戦を遂行するための態勢を整えているわけである。
島嶼の奪回は必然的に上陸作戦となる。そして我の上陸作戦への簡易かつ効果的な妨害となるのが敵による機雷の敷設なのだ。
本号では、水陸機動団による上陸作戦と敵機雷に対処する作戦(対機雷戦)の概要を理解するために以下の項目を紹介する。
(1) 水陸両用作戦の概要
杉山 公俊 1等空佐「水陸両用作戦の概要および航空自衛隊に求められる役割」(『鵬友』第43巻第2号掲載)から①水陸両用作戦の定義及び目的②作戦の種類③作戦の特徴について解説した箇所を抜粋した。なお『鵬友』誌は空自の隊内誌。
筆者は航空自衛官だが、統合幕僚監部、陸自及び海自部隊での水陸両用作戦に係る各種検討に参加した経験があり、本論文はそれらを踏まえて水陸両用作戦において空自に求められる役割についての私見を述べたものだ。
(2) 奪回作戦成功の要件
陸自における普通科・特科・機甲科の3職種総合教育機関である富士学校が実質的に発行していた隊内誌『FUJI』第388号~第389号に尖閣諸島を例に取り、離島の作戦の様相や戦い方についての解説記事「『離島の作戦における普通科の戦い方』について」が掲載された。
この中から奪回作戦成功の要件を説明した箇所を抜粋した。
(3) 日米共同の水陸両用作戦に必要な諸施策
「諸外国の水陸両用作戦に関する調査研究」(統合幕僚学校委託研究)から日米共同で水陸両用作戦を行うに当たって自衛隊に求められる各種諸施策の提言部分を抜粋した。
提言において日米共同訓練場における地位協定上の調整について触れられているが、「海兵隊の沖縄展開のために地位協定改定を―米海兵隊中佐の提言」とも通底する問題である。
(4) 対機雷戦
上述した通り上陸作戦への簡易かつ効果的な妨害となるのが敵による機雷敷設である。
自衛隊では機雷を使用し又は敵の機雷敷設に対して行う全ての行動を機雷戦といい、前者を機雷敷設戦、後者を対機雷戦と大別する。
このうち機雷掃海と機雷掃討の概略を防衛省記者クラブ勉強会資料から抜粋した。

【出典】(資料番号:24.9.23-2)「機雷戦の概要」(2024年6月18日)19頁。
(5) 朝鮮戦争時の掃海部隊の被害
第二次世界大戦後の戦争において掃海部隊が最も被害を受けたのが朝鮮戦争である。
防衛省が安保法制の法案審議資料として国会に提出した諸資料の中から、同戦争時の米軍海軍及び海上保安庁の掃海部隊の損害について説明した資料を発見したので、その抜粋を掲載する。
(6) 任務遂行上の課題
陸自の部内誌に航空科職種における事故防止及び安全管理の観点から、陸上幕僚監部装備計画部航空機課航空安全班が編集し、陸幕が発行する『航空安全情報』がある。
同誌に掲載された「水陸両用作戦における航空科部隊との連携」から、陸自航空科部隊と水陸機動団の連携上の課題について取り上げた箇所を抜粋した。
(7) 水陸機動団と在沖海兵隊の編成
陸自水陸機動団及び沖縄に司令部のある第3海兵機動展開部隊それぞれの編成等を紹介。
【関連バックナンバー】
□ 『軍事民論』第601号…13頁 *抜粋はここをクリック
陸上自衛隊が想定する仮想敵の島嶼侵攻作戦―陸自訓練資料「演習対抗部隊」より
□ 『軍事民論』第665号…7頁 *抜粋はここをクリック
資料:陸上自衛隊作戦別教範『離島の作戦(試行案)』(抜粋)
南シナ海での中国との紛争における地対艦ミサイルの効果―米議会予算局報告書
□ 『軍事民論』第675号…4頁 *抜粋はここをクリック
水陸機動団における指揮・統制―陸自教範「水陸機動団(仮称)(試行案)」から
□ 『軍事民論』第686号…7頁 *抜粋はここをクリック
即応機動連隊の離島防衛作戦―陸自教範『即応機動連隊(仮称)(試行案)』より
□ 『軍事民論』第710号…5頁 *抜粋はここをクリック
水陸両用車(AAV7A1)の性能・諸元―陸自訓練資料「水陸両用車(仮称)(試行案)」より
□『軍事民論』第711号…8頁 *抜粋はここをクリック
離島防衛における対謀略戦―陸自教範「情報科運用」より
防研シンポで島嶼防衛を巡り『島内反対派が流すデマ等により民意が誘導』―元陸幕長発言
□ 『軍事民論』第723号…9頁 *抜粋はここをクリック
台湾有事―南西諸島における国民保護と港湾破壊
□『軍事民論』第738号…10頁 *ここをクリック
陸上自衛隊が見た米海兵沿岸連隊(MLR)の戦い方―陸上自衛隊教育訓練研究本部「教訓詳報」より― □ 『軍事民論』第739号…10頁 *抜粋はここをクリック
上陸作戦での水陸両用車「AAV7」の水上航行要領―陸自訓練資料より
有事では避難住民より「外国軍隊」の利用を優先
―「特定公共施設利用法」内閣官房説明資料― *ここをクリック
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