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「対馬丸」の悲劇を繰り返すのか 「軍民混在」輸送を図る陸自教範『兵站』

軍事問題研究会編集
8月4日
読了時間: 3分

 第二次大戦中の米潜水艦による日本商船の撃沈に対して、当時の日本政府は対照的な対応を取っていた。

 1つは、現在も「戦争の悲劇」として語り継がれる、沖縄から本土へ疎開する学童約800人を乗せた「対馬丸」が撃沈された事件(1944年8月22日)。もう1つは、南方の日本占領地域にいた連合国捕虜等に救援物資を輸送した「阿波丸」が帰路の台湾海峡で撃沈された事件(1945年4月1日)

 実は当時の日本政府は「阿波丸」の撃沈について米政府に公式に抗議しているにもかかわらず(米政府も公式に謝罪)、「対馬丸」については抗議していない。

 その理由について、海上自衛隊第65期指揮幕僚課程教育資料である「関係国内法令―行動法規―」(海幹校作戦法規研究室)は、次のように考察している。

 「阿波丸」は連合国によって安導券(注)が交付されており、連合国自体がその安全を保証していた。一方「対馬丸」については、連合国は安全の保証をしていなかった。

 なお日本政府が「対馬丸」に対して安導券等の事前の保護を連合国に求めなかったのは、「学童だけでなく陸軍の兵員も輸送対象者として乗船させていた」(「関係国内法令」97頁)ことから連合国の承諾を得ることが困難であったからだ。

 この当時から日本政府は、軍隊(軍人、兵器及び軍事物資)が乗船している場合、民間人が同乗していても軍事目標として攻撃対象となり得ることを十分理解していたのである。

 今日では、「軍民分離」原則、即ち軍事目標(戦闘員と軍用物)とそれ以外(民間人と民用物)を明確に区別して、攻撃の対象は軍事目標のみに限られるとするのが、国際法(特に国際人道法)の基本原則として確立されている(近年の紛争で軽視されていることは事実であるが)。そしてこの原則は、攻撃だけでなく、防御でも義務となっている。要するに攻撃を軍事目標に限らせるために、民間人や民用物を軍事目標から極力離すことが求められているのである。

 しかし「対馬丸」の悲劇を陸上輸送で繰り返すがのごとく、陸上自衛隊が、この「軍民分離」原則に反して、「軍民混在」輸送を図ろうとしていることが、陸自教範から明らかになった。

 その教範が『兵站』(陸自教範4-02-01-01-30-0)である。同教範は、「陸上総隊、方面隊及び師団・旅団(中央兵站組織を含む。)に焦点を当てて、各級部隊の指揮官及び幕僚として必要な兵站に関する基本的事項及び業務遂行要領を記述」(「はしがき」)したものだ。

(注)安導券を与えられた船舶(vessels granted safe conducts)は、敵からの妨害を受けることなく一定の場所に航海することが認められる。


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