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現地住民の離島からの避難を許さない              陸自が有事で行う「現地調達」―陸自教範『兵站』より

軍事問題研究会編集
9月28日
読了時間: 5分

『軍事民論』第789号(2026年10月1日)…9頁

(記事1)

現地住民の離島からの避難を許さない             

陸自が有事で行う「現地調達」―陸自教範『兵站』より

(記事2)

陸上自衛隊補給本部改編の狙い―南西諸島有事を念頭に全国規模での補給・整備を可能に 【記事1】 (小見出し)

1.なぜ「現地調達」なのか 2.「現地調達」とは

3.現地調達の対象は何か

4.どのように―「現地調達」の手順

5.自衛隊法を無視?―有事の労務・役務の調達

6.おわりに―避難が許されない住民の選抜が始まる

 災害派遣時にはその「自己完結性」に期待が集まる自衛隊であるが、実は有事においては現地調達に頼るのである。そのことを明らかにしている部内資料が、本会の情報公開請求に対して防衛省が開示した陸上自衛隊教範『兵站』(陸上自衛隊教範4-02-01-01-30-0号)だ。

 同教範は「陸上総隊、方面隊及び師団・旅団(中央兵站組織を含む。)に焦点を当てて、各級部隊の指揮官及び幕僚として必要な兵站に関する基本的事項及び業務遂行要領を記述」(「はしがき」)したものだ。

 兵站とは、部隊の戦闘力を維持・増進して作戦を支援することを目的とする。即ち、作戦上必要とされる物的資源等を確保し、適時適所に必要とする部隊等に提供すると共に、これを適切に維持・管理して作戦・戦闘の基盤と可能性を付与することだ。そのためには、国家の策源から末端の個人に至るまでの継続・一貫した機能と共に、平時から有事まで間断なく行われる必要がある(1頁。以下、括弧内の頁数のみの表記は『兵站』からの引用を示す)。なお兵站とは、補給、回収、輸送、不動産、労務等の機能からなり、これらが密接に連携し、その能力を総合的に発揮することによりその目的は達成される。

 このことから兵站は、国土、国民と一体となって初めて成立するもので、主として国家の防衛基盤の能力に左右される。従って、国民の協力の下、関係部外機関等との密接な連携態勢を確立し、国家の防衛基盤を兵站支援能力の増強に寄与させるためにあらゆる施策を講ずるとともに、これを最大限に活用することが重要であるのだ(1頁)。

 (何やら戦時中の「軍民一体」を彷彿させる)この「国土、国民と一体となって初めて成立する」という兵站の要請から、現地調達が正当化されるのである。そして『兵站』は、現地調達について、その目的や特性、調達の対象、調達方法、調達業務の手順、関係部隊の役割、調達に関する統制などを定めている。

 現地調達とは、方面隊の作戦区域において、方面隊以下の各級部隊が対価を支払い、補給品、不動産及び労務・役務を取得することである(379頁)。なお「労務・役務」とは部外の作業力、技術力等を取得・配分・管理して、これを活用する機能をいう。このうち労務は組織化されていない個人と契約、役務は民間又は公共の会社・団体等とそれぞれ契約してその作業力等を活用することをいう(『用語集』(陸上自衛隊教範第3-03-04-91-23-1号)150頁)。

 現地調達の利点は、作戦地域内の現地資源及び部外力を短期間に活用し、戦力化できることにある。つまり輸送に係るコストや時間を削減できるわけだ。このことは離島においては大きなメリットを有する。

 以下、『兵站』第7章「第1節 現地調達業務」から陸自が企図する有事における現地調達のプロセス―いかに現地の物資と労働力に頼るのか―を明らかにしたい。最後まで読めば、本号のタイトル「現地住民の離島からの避難を許さない」は決して大げさでないことが理解できよう。


【記事2】  水上艦隊や情報作戦集団の新編に隠れて全く話題に上らなかったが、2025年度の自衛隊の組織改編の最大の目玉は、陸上自衛隊の補給統制本部を補給本部へ改編することであった。

 このことを気付かせてくれたのが、「防衛省設置法等の一部を改正する法律案逐条解説」(日付なし)だ。

 同解説は、内閣法制局の行政文書ファイル「防衛省設置法等の一部を改正する法律案(令和7法律44)」に綴られていた文書で、表紙に手書きで「12/24 部長」と記されていることから、内閣法制局への説明資料と思われる(12/24は受領した日付と思料される)。なお内閣法制局では、第二部長から第四部長までは府省別の審査・立案を、それぞれ統括する(「内閣法制局の長官,次長,部長,総務主幹及び参事官(AI作成)」)。

 同資料によれば補給本部への改編の狙いが、陸上自衛隊の全国運用(実質は台湾有事を念頭に南西諸島に向けての部隊展開。詳しくは本誌第758号参照)に当たって、全国規模で補給・整備等を一元的に実施できるようにすることであることを明らかにしている。

 要するに台湾有事に備えた兵站体制の強化を目指して、補給本部への改編が行われたわけだ。

 本号では、補給本部への改編に係る自衛隊法改正の趣旨とその背景を解説した箇所を抜粋・紹介する。


【関連情報】

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「対馬丸」の悲劇を繰り返すのか 「軍民混在」輸送を図る陸自教範『兵站』*ここをクリック

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