日中対立を引き起こしている問題の1つである尖閣諸島について、政府は一貫して「日本国の施政の下にある領域」(「東シナ海の領海防衛に対する政府の考え方に関する質問に対する答弁書」)(注)との立場を取っている。
ところが統合幕僚学校の部内研究が、「現在、客観的に尖閣諸島が日本の施政下にあるとは言えない」(35頁)と政府見解を否定していたことが、本会の情報公開請求により防衛省が開示した「各国が考える領域横断作戦の概要に関する研究」(2021年3月25日 統合幕僚学校)から明らかになった。
同研究は、「令和元年度指定研究」として実施されたものである。「指定研究」とは、統合幕僚長の指示する事項について実施する調査研究をいう(平成18年統合幕僚監部達第19号「研究開発に関する達」第2条)。
同研究はタイトルの通り各国の領域横断作戦の考え方をまとめたもので、その内の一章として中国を取り上げている。更にその中の一節として、領域横断作戦を用いて尖閣諸島を巡る現状変更の試みを分析した中で冒頭の文言が記載されていた。
(注) 質問主意書に対する政府答弁書は閣議決定を経るため、必然的に政府統一見解となる。
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【『軍事民論』関連バックナンバー】
第695号(2022年6月2日)「尖閣問題を巡る外務省の自問自答―『日中平和友好条約に関する擬問擬答集』(外務省)より」
第720号(2023年7月3日)「中国海警による尖閣周辺で予測される侵害行為―防研部内研究より」
第721号(2023年7月31日)「中国『三戦』を実施する人民解放軍組織―防研部内研究より」
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