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「現地情報隊」情報収集は公文書管理法違反―個人情報流出も問題

軍事問題研究会編集
7月27日
読了時間: 4分

更新日:8月11日

 熊本日日新聞の大スクープで、陸上自衛隊中央情報隊の対外情報部門「現地情報隊」が、国内で大学教授やNPO法人代表といった有識者を対象に思想・信条等の調査を行っていたことが明らかになった。

 今回の情報収集は、イラク戦争が起きた2003~04年にかけて陸自情報保全隊(現「自衛隊情報保全隊」)が、自衛隊イラク派遣に反対する全国各地のデモや集会を監視・情報収集していた事例(こちらは防諜)とは事情が異なる。

 「調査対象は、海外事情に精通した有識者が多く、その人物が情報源として利用可能かどうかを見極めるため、現地情報隊が思想的な選別を実施していたとみられる」(【独自】陸自情報部隊が「愛国心」など調査か)という通り、そもそもは自衛隊に協力してくれる有識者のリストを作成することが目的だったとみられる。それが作業の過程で、本来ならその目的に必要のないはずのセンシティブな情報も収集してしまったことが問題となったわけだ。

 収集された情報は「個人BSD」(ベーシックソースデータ)という報告書に詳細にまとめられ、朝霞駐屯地内で保管・共有されているという。

 後追いするメディアも含めこの問題をシビリアン・コントロールの観点から批判しているが、もう一つ見過ごすことができないのは、この問題は公文書管理法(「公文書等の管理に関する法律」)違反なのである(そして個人情報漏洩事件でもある)

 なぜならネタ元の元現地情報隊隊員が、公文書であれば情報公開請求された時に出さないといけないという理由から「そもそも個人BSDを公文書として扱っていない」(【独自】情報収集に「愛国心を利用」 陸自情報部隊の元隊員が証言」)と証言しているからだ。

 そこで「個人BSD」が公文書に該当するかどうか検討しよう。

 公文書管理法第2条は、公文書に該当するものとして行政文書を挙げている。

 そして情報公開法(「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」)第2条によれば、行政文書とは行政機関の職員が職務上作成又は取得した文書・図画・電磁的記録であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるために当該行政機関が保有しているものをいう。

 報道によれば、「個人BSD」は現地情報隊の業務として作成され、朝霞駐屯地内で保管・共有されていたとされる。これが事実であれば、「個人BSD」が行政文書に該当すると断言して良かろう。

 公文書管理法第5条では、「行政機関の職員が行政文書を作成し、又は取得したときは、当該行政機関の長は、政令で定めるところにより、当該行政文書について分類し、名称を付するとともに、保存期間及び保存期間の満了する日を設定しなければならない」とされている。「個人BSD」が証言の通り、朝霞駐屯地内で保管・共有されながら「公文書として扱っていない」のであれば、同条違反のそしりは免れない。

 今回「個人BSD」をメディアが入手できたのも、「個人BSD」が公文書管理法に基づき適切に管理されていなかったため、外部に持ち出されることを防げず、その内容が報道につながったと指摘できる。

 そこで適切な管理が行われていないと指摘できる一例が、「陸上自衛隊における保有個人情報等の安全管理等に関する達」(令和4年陸上自衛隊達第32-25号)第26条に基づく個人情報標記の表示が、報じられた「個人BSD」には見当たらないことだ(【文書入手】陸自・現地情報隊が、市民の「愛国心」など思想調査)

 同達第26条は保有個人情報等が記録された媒体には、「個人情報(注意)」又は「個人情報(部内限り)」の標記を赤色調の色で表示するものとする」と定めている。実際の標記は右図の通りだ(×が付いているのは行政文書の開示に当たって防衛省が施したもの)

 「個人BSD」には情報管理のための取扱区分に関する標記がないのは、「公文書として扱っていない」ためであろう。しかしこのことは、「個人BSD」が防衛省・自衛隊内では存在しないことを意味するのである。なぜなら「公文書として扱っていない」ということから、「個人BSD」は「行政文書ファイル管理簿」(公文書管理法第7条)には記載されていないはずであり(記載されていれば公文書として管理されている)、実際に防衛省・自衛隊内でもその情報に直接アクセスできる者以外はその存在を知ることが不可能だからだ。

 「数千人分」(【独自】陸自情報部隊が「愛国心」など調査か)のセンシティブな情報を含む個人情報が保存されているにもかかわらず、建前上は防衛省・自衛隊内には存在しないとされている現状は問題だ。情報流出を防止する上でも保有実態を確認する必要が防衛省にはある。

【関連情報】 

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