「対処力」とは「『対処』する力」ではない
『防衛白書』などで「抑止力」と対になって使われる(「抑止力・対処力」といった)「対処力」であるが、抑止力と異なり、その概念や定義が説明されることがない。
そこで、この「対処力」という用語の概念について、元防衛官僚が解説しているので紹介したい。
元防衛官僚は「対処力」について以下の通り解説している。
自国が戦争による被害を受けないようにするには、①紛争を話し合いで解決する、②相手が「武力による紛争解決」を志向しても、実際に行動に出ることを思いとどまらせる、③相手が実際に戦争を仕掛けてきた場合には相手を撃退する、といったことが考えられる。①には外交力、②には抑止力、③には対処力が必要になる。
防衛省の中枢で勤務してきた元防衛官僚によるこの説明からは、防衛省が「対処力」という時には、「相手が実際に戦争を仕掛けてきた場合に、相手を撃退する」力という意味で用いていることが見て取れる。言い換えると、外交や抑止で解決できず、武力紛争が発生した後に武力を持って対応する力が「対処力」ということになる。
しかし、同じく『白書』で使われる「対処」という用語には、必ずしも「相手が実際に戦争を仕掛けてきた場合に、相手を撃退する」ことを意味しない。
例えば今年の『白書』での「武装工作船と疑われる船(不審船)には、……自衛隊が海上保安庁と連携しつつ対処する」(296頁)という使われ方から、「対処」が必ずしも戦争において相手を撃退することを意味するものではないことが分かる。
実は「対処」という用語は、防衛省・自衛隊において特別な意味を持っている。そのことを示しているのが、「統合用語集」(統合訓練資料1-7)だ。この統合訓練資料は、「統合教範類に関する達(平成18年統合幕僚監部達第29号)別表に基づき、自衛隊の統合運用に関し、使用する用語の意義を明らかにすることを目的」(「前文」)として作成されたものだ。
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