top of page

「対処力」とは「『対処』する力」ではない

軍事問題研究会編集
8月12日
読了時間: 3分

 『防衛白書』などで「抑止力」と対になって使われる(「抑止力・対処力」といった)「対処力」であるが、抑止力と異なり、その概念や定義が説明されることがない。

 そこで、この「対処力」という用語の概念について、元防衛官僚が解説しているので紹介したい。

 元防衛官僚は「対処力」について以下の通り解説している。


 自国が戦争による被害を受けないようにするには、①紛争を話し合いで解決する、②相手が「武力による紛争解決」を志向しても、実際に行動に出ることを思いとどまらせる、③相手が実際に戦争を仕掛けてきた場合には相手を撃退する、といったことが考えられる。①には外交力、②には抑止力、③には対処力が必要になる。


 防衛省の中枢で勤務してきた元防衛官僚によるこの説明からは、防衛省が「対処力」という時には、「相手が実際に戦争を仕掛けてきた場合に、相手を撃退する」力という意味で用いていることが見て取れる。言い換えると、外交や抑止で解決できず、武力紛争が発生した後に武力を持って対応する力が「対処力」ということになる。

 しかし、同じく『白書』で使われる「対処」という用語には、必ずしも「相手が実際に戦争を仕掛けてきた場合に、相手を撃退する」ことを意味しない。

 例えば今年の『白書』での「武装工作船と疑われる船(不審船)には、……自衛隊が海上保安庁と連携しつつ対処する」(296頁)という使われ方から、「対処」が必ずしも戦争において相手を撃退することを意味するものではないことが分かる。

 実は「対処」という用語は、防衛省・自衛隊において特別な意味を持っている。そのことを示しているのが、「統合用語集」(統合訓練資料1-7)だ。この統合訓練資料は、「統合教範類に関する達(平成18年統合幕僚監部達第29号)別表に基づき、自衛隊の統合運用に関し、使用する用語の意義を明らかにすることを目的」(「前文」)として作成されたものだ。


【関連情報】

『軍事民論』第786号(8月6日発行) ここをクリック

『防衛白書』がいう「可能性がある」は何%かが分かる        

防衛省情報本部「情報業務実施要領」の概要


******** 続きを読まれたい方へ ********  


 上記は会員向け本会ニュースですが、部外の方にも頒布致します。以下に従ってご注文下さい。


□ 頒価 ¥200円(前金制)

 下記本会口座にご入金戴くと共に、本会アドレス(ttn5rhg28d@mx2.ttcn.ne.jp)までニュースタイトルを添えてお申し付け下さい。

 お振込み確認後、PDFファイル(A4×1頁)をメールにて送付致します。


□ 領収証

 発行しませんのでご注意下さい。

 ただし本誌又は本会ニュースのバックナンバーを合わせて¥500円以上をご購入の場合は、お申し付け戴ければ発行致します。


(振込先:郵便振替)

【郵便局でのお振込みの場合】

口座番号:00110-1-44399

加入者名:軍事問題研究会


【銀行またはインターネット・バンキングでのお振込みの場合】

銀行名:ゆうちょ銀行

金融機関コード:9900

 店番:019

 預金種目:当座

 店名:〇一九店(ゼロイチキユウ店)

 口座番号:0044399

 加入者名:軍事問題研究会

 
 
 

最新記事

すべて表示
マスメディアへの外国からの「影響工作」も調査対象―国家情報会議設置法案説明資料より

本年7月31日に発足した国家情報会議は、我が国インテリジェンスの司令塔機能を担う組織として紹介されることが多い。しかし、具体的にどのような情報や活動を国家情報会議が取り扱うことを想定しているのかは、必ずしも明らかになっていない。   今回本会は、国家情報会議設置法(以下「設置法」)に関連する資料の情報公開請求を内閣官房に行い、その開示を受けた。一連の資料の中から、国家情報会議で扱う情報や、外国によ

 
 
 
9月月例研:「兵站」概論

【日 時】9月26日(土)午後3時~5時(2時45分開場) 【テーマ】「兵站」概論  英語圏での古くからの格言に「戦争のプロは兵站を語り、素人は戦略を語る。」(注)がある。  我が国では自衛隊OBを代表とする軍事専門家の中でStrategist(ストラテジスト)を名乗る者は数多くいるが、logistician(ロジスティシャン)を名乗る者はいない―即ち戦争のプロがいないのが現状だ。  また米シンク

 
 
 
「可動率100%」では継戦能力が失われる? ―現職3等空佐が問う出口戦略から考える航空機運用

可動率こそが部隊の実力であり、継戦能力の本質であるという(永岩俊道 元空将ブログ)。これに従えば、台湾有事を巡り南西諸島が戦域となる事態が現実味を増す中、自衛隊がこれに全力で対処するためには、兵器の可動率を可能な限り高く維持することが必要だというのが、論理的帰結となる。  ところが現職の3等空佐が、継戦能力の観点から「戦時こそあえて可動率を下げる必要がある」との提言を航空自衛隊部内誌『そうび』に寄

 
 
 

コメント


  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

©2022 by 軍事問題研究会。Wix.com で作成されました。

bottom of page