中国本土への攻撃は日本の「反撃能力」が代行か?
在沖米海兵沿岸連隊が装備するミサイルの射程はINF条約未満
―防衛省部内資料から明らかに―
米国は、旧ソ連と結んでいたINF条約により、中距離(射程500〜5,500㎞)の地上発射型ミサイルの保有が長年できなかった。このため、この間に中距離ミサイル配備を進めてきた中国との間に深刻な「ミサイルギャップ」が生じていると言われている。
そうした状況にも関わらず、沖縄に新たに編成される米第12海兵沿岸連隊(Marine Littoral Regimen)が装備する対艦ミサイルの射程が500㎞を下回ると米国政府から説明を受けていることが、本会の情報公開請求により防衛省が開示した部内資料から明らかになった。500㎞を下回るという含意は、既に失効した同条約で禁止されていた射程を超えないということにあるという。
また同連隊はトマホーク巡航ミサイル等の長射程(INF条約に則ると中距離)ミサイルも装備しないと部内資料は説明する。
500㎞を下回る射程のミサイルでは、沖縄からでも中国本土を直接攻撃できない。米軍の企図は、日本の「反撃能力」に代行させることにあるのかもしれない。
第12海兵沿岸連隊は、現行の第12海兵連隊が2025年までに改編されて作られる部隊で、これに伴い主要装備が現行の高機動ロケット砲システム(HIMARS)から地対艦ミサイル(NSM)を無人車両に搭載して発射するシステム(NMESIS)に変更される(沖縄タイムスHP)。
台湾有事を巡り米軍が南西諸島とフィリピンにミサイル網を構築すると報じられ(47NEWS)、事実フィリピンには中距離ミサイルシステムが米比合同演習後も撤去されずに置かれているという(讀賣新聞HP)。フィリピンに置かれた中距離ミサイルシステムは米陸軍が保有する「タイフォン」(Typhon)でトマホーク巡航ミサイル(最大射程1800km以上)も発射でき、中国本土も射程に入れる。
その一方で台湾有事を巡る日米共同統合演習で、タイフォンを保有する米陸軍が南西諸島に配置されずにフィリピンに置かれたことで日米間で激論になったという(新潟日報HP)。
現在防衛省が開発を進めている地対艦ミサイルにもなる「12式地対艦誘導弾能力向上型」は中国本土に届く射程1,000㎞以上と言われるし、第12海兵沿岸連隊が装備しないとするトマホーク巡航ミサイル400発を防衛省は当初の予定から1年前倒しして2025年度から取得し配備する予定だ(NHK HP)。
こうした状況下で沖縄配備の海兵隊ミサイルが中国本土に届かないのは、中国本土への攻撃を、米国と共同に行使される日本の「反撃能力」(『軍事民論』第733号)に米軍が期待を寄せていることの証左であろう。
今回同省が開示した部内資料が「態勢関連想定集」(20231107版)である。その内容から、「日米安全保障協議委員会(2+2)共同発表」(2023年1月11日)に関する対外想定問答として作成されたものと思われる。
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