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  • 軍事問題研究会編集

ニュース短信:安倍元首相「核シェアリング」発言と米中距離ミサイル配備計画

 ウクライナ紛争を巡るロシアによる核威嚇を契機に、我が国でも核抑止力の強化の一環として、NATOの核シェアリングを採用すべきとの主張が政界から湧き上がっている。核シェアリングとは、米国と核兵器を共同管理することで、当然のことながら米核兵器の自国内持ち込みが前提となる。


 その急先鋒が安倍元総理だ。元総理は、若手議員の時代から核武装が持論のため、今回の主張も「米国に対し、何の打診も根回しもしないまま、思い付きで放言」(安倍元首相「核シェアリング論」を提起…岸田政権内から一斉に反発)したとの指摘がある。しかしこの主張には根拠十分な伏線がある。


 沖縄地元紙『琉球新報』は、2019年10月3日付けで、米国が中距離弾道ミサイルを日本全土に大量配備する計画があることを報じている(「米、沖縄に新型中距離弾道ミサイル配備計画」)。この計画は、中距離核兵器(INF)全廃条約が失効(2019年8月)したことを受けて、同条約がそれまで禁じていた中距離弾道ミサイルを米国が日本全土に大量配備するというものだ。

 実際にこうした大量配備を行う場合、日米安保条約に関する取決めである『条約第六条の実施に関する交換公文』でいう「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更」に該当するので、日本政府の了解なしには行えない。従って当時の安倍政権に何らかの打診があったと見るのが自然であろう。安倍元総理の発言は、この配備を受け入れるのと引き換えに核シェアリングを米側に求める腹積もりであったのが、突然の退陣で敵わなかったことヘの無念さが引き金となっているのかもしれない。


【関連本誌バックナンバー】

『軍事民論』第694号:中共の対日軍事侵略に備えて米戦術核の国内配備を―外務省「外交政策企画委員会」記録―

『軍事民論』第586号:防衛省部内研究が答えるトランプ氏「日本核武装容認論」

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