コードネームがなぜ変わったのか?―日米ミサイル防衛訓練
- 軍事問題研究会編集
- 2月26日
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平成29(2017)年度から日米共同統合訓練として毎年実施されている日米ミサイル防衛訓練であるが、統合幕僚監部報道発表資料で日本側の訓練コードネームが令和6(2024)年度から変わっていることにお気付きだろうか(米軍のコードネームは「Resilient Shield」のまま)。
即ちコードネームを変えざるを得ないほど訓練の内容が変容したと見るべきであろう。
令和6年度から「防勢対航空」(令和7年度の「防勢」も同じ意味と思われる)という用語が入っている。
航空自衛隊では、敵航空戦力の破砕を目的とした戦術的な航空作戦を「対航空」(Counter Air)という。これは更に攻勢対航空(Offensive Counter Air: OCA)と防勢対航空(Defensive Counter Air: DCA)に区分される*1。

DCAとは、友軍のコミュニケーションラインを守り、敵に航空攻撃を行う自由を与えず、統合作戦地域の全ての部隊が活動できる安全な地域を提供することを作戦目的とする*2。
これに対してOCAとは、敵の航空機、ミサイル、発射プラットフォーム及び付随する構造物やシステムを、発進・発射の前後を問わず、可能な限りその発生源に近い場所で破壊又は無力化するものである。OCA作戦は、敵の航空機及びミサイルを発射前に交戦し、その発射を阻止又は妨害することを作戦目的とする*3。要するに敵基地攻撃だ。
ここで指摘したいのが、DCAはOCAと連携することもあるという点だ*4。
例年通りの防空作戦の訓練であれば、わざわざ新たに「防勢対航空」という名称を加えて、余計な詮索を招く必要はあるまい。それゆえコードネームを変更せざるを得ないほどの訓練内容の変更があった―訓練にOCA(敵基地攻撃)との連携が加わった―可能性が高い。
その背景にあるのが、それまでの防衛計画の大綱に代わって新たに制定された「国家防衛戦略」(令和4(2022)年12月16日)において「統合防空・ミサイル防衛」の含意が変わったことにある。
実は閣議決定文書において「統合防空・ミサイル防衛」が登場したのは、同戦略が初めてである。同戦略に代わる前の「平成31度以降に係る防衛計画の大綱」(30大綱)では「総合ミサイル防空」と称しており、これは「米国のIAMD構想とは異なり、ミサイル防衛・防空に重きを置いているほか、敵基地攻撃を念頭においたものではありません」*5とされていた。

ところが国家防衛戦略において「統合防空・ミサイル防衛」とは、ミサイル迎撃にとどまらず「弾道ミサイル等の攻撃を防ぐためにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において、有効な反撃を加える能力として、スタンド・オフ防衛能力等を活用する」―即ち敵基地攻撃を行うとされたのである。
この政策の変更が日米共同訓練に反映され始めたのが令和6年度からであったのであろう。
今後、この訓練は防空・ミサイル防衛にとどまらず、敵基地攻撃の訓練へと進展していくものと思われる。
*1 (資料番号:18.10.24-1)航空自衛隊教範02-1「航空作戦」(2016年6月 航空幕僚監部)8頁。なお資料番号とは、整理・保存ために本会が便宜上付けた番号である。
*2 (資料番号:26.2.4-1)「戦術的な航空作戦に関する研究(その6)最終報告」(戦術団研第5号(令和7年2月27日)別冊)24頁。
*3 (資料番号:26.2.4-1)20~21頁。
*4 (資料番号:26.2.4-1)24頁。
*5 (資料番号:20.2.19-2)「『平成31年度以降に係る防衛計画の大綱』関連想定」(2018/12/25/1100 内閣官房国家安全保障局)90頁。
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