top of page

爆撃機の損失率を比較対照すると「面白い」―防研部内研究

軍事問題研究会編集

 防衛研究所の部内研究で、爆撃機の損失率の比較をすると「面白い」とする報告書がまとめられていることが、防衛省に対する本会の情報公開請求で明らかになった。

 その部内研究報告書が、「アメリカ第21爆撃機軍団の対日爆撃における損害許容と戦術変化について」(防衛研究所令和3年度基礎研究成果報告書)だ。

 同報告書は、米陸軍航空軍のB-29部隊の中でも、日本の都市及び工業地帯等の焼尽に大きな成果を挙げた第21爆撃機軍団について、爆撃機の損失率の許容範囲とその戦術等の関係について調査したものだ。

 同報告書は、調査範囲が狭すぎたことを挙げ、「第二次世界大戦末期のアメリカが勝利の勢いに乗っている時期で、兵器としては最新のB-29ということで面白みに欠けるところがあった」と反省。研究の将来の展望として、「戦況がもっと困難な時の爆撃部隊、例えば1943年ヨーロッパ戦線のアメリカ第8航空軍、あるいは1942年までのイギリス空軍の爆撃機集団を対象とすることが考えられる。日本ならば海軍航空隊による重慶爆撃がある。これらを調べ上げて損失率を比較対照すると面白い結果が出てくるがもしれない」(いずれもⅳ頁)と述べている。

 爆撃機の損失とは乗員の死傷を意味する。上記の記述は、死傷者を数字としてしか見ていない点で、陸自幹部候補生学校の沖縄戦史現地教育実施計画に「日本軍が善戦敢闘」との記述された問題と通底すると言える。ちなみに「日本軍が善戦敢闘」との記述は防研の前身である防衛研修所が作成した『戦史叢書』を根拠としている。


【関連情報】

陸自第15旅団「辞世の句」再掲載の背景

―自衛隊の大東亜戦争史観を支える防研『戦史叢書』―  *ここをクリック

閲覧数:18回

最新記事

すべて表示

若い下級自衛官は現状の処遇を肯定―空幕内部データが示す自衛官の満足度―

『軍事民論』第747号 (2025年1月31日発行) …8頁 若い下級自衛官は現状の処遇を肯定 ―空幕内部データが示す自衛官の満足度―  自衛官の深刻な採用難から近年、その対策として自衛官の処遇改善が叫ばれるようになった。  これを受けて政府も自衛官の処遇改善策の基本方針...

Comments


  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

©2022 by 軍事問題研究会。Wix.com で作成されました。

bottom of page