湯浅 陸上幕僚長(当時)が部外の講演で、「反戦デモ」と「報道」をテロと同列において敵視する発言を行ったと『しんぶん赤旗』が報じた問題で、講演の際に使用された資料が事前に内局に提出されていたことが本会の情報公開請求により明らかになった。
報道を受けて本会が関連資料の情報公開請求を防衛省に行ったところ、報じられた偕行社と東京都防衛協会それぞれの講演での資料(注)と講演の届出が開示された。
講演資料には報じられた通り、報道や反戦デモを「グレーゾーンの戦い」とする記述があった。
また届出とは、「部外に対する意見発表の際の手続の実施について(通知)」(官広第2917号 21.3.12)に基づき、外部での講演等に際しては事前に提出が義務付けられた書面で、陸幕長は大臣官房長に提出することが定められている。
届出は、上記「通知」により様式が定められており、以下の7項目を報告することとなっている。
① 発表形態
② 講演の主催者等
③ 実施期日
④ 実施場所
⑤ 対象者及び予定される聴衆者数
⑥ 主題
⑦ 内容
このうち⑦については、当日の配布資料等を添付することになっており、届出のそれには「添付資料参照」(偕行社)あるいは「別添えのとおり」(東京都防衛協会)と記載されていた。
そこでこれら届出の際に添付された資料を情報公開請求したところ、それぞれの講演の際の資料であったことが、同省の情報公開・個人情報保護窓口の回答で明らかになった(重複請求しないように窓口が親切に教えてくれたわけだ)。
自衛隊員の部外での発表に関して防衛省は、届出制の建前を取っているが、実際は事前検閲の運用がなされているのは部内では周知のことだ。
つまり内局が、陸幕長講演資料が報道や反戦デモを「グレーゾーンの戦い」とした内容に干渉しなかったことは、彼らもまた同じ認識をもっていることの証左なのである。
(注) 偕行社での講演資料が(資料番号:22.7.11-4)「陸上自衛隊の今後の取組み」(2019年10月11日 陸上幕僚監部)、東京都防衛協会での講演資料が(資料番号:22.7.11-5)「陸上自衛隊の今後の取組み」(2020年1月20日 陸上幕僚監部)。
なお資料番号とは、本会所蔵資料の整理・保存の便宜上付けた番号である。
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