『軍事民論』第741号(9月27日発行)…13頁
防衛省部内資料から日米首脳共同声明(2024年4月10日)の行間を読む
近く政権を去る日米両首脳の共同声明を取り上げることに何の意味があろうかと思われるかもしれない。
しかしこの日米首脳共同声明には、「もしトラ」に備えて「政権が変わっても日米関係がぶれないよう、手を打っておく」(“もしトラ”の中での国賓訪米 その思惑は?)という狙いがあった。即ち政権が代わっても政策を変更させないための「楔」を打ち込んだのが、日米の実務者がこの声明に込めた狙いと言える。従ってこの声明で打ち込まれた「楔」は、日米首脳交代後も引き続きその役割を果たすものと思われる。
そこでその「楔」がいかなる文言となって打ち込まれているのか、防衛省の部内資料「日米首脳会談基本想定(安保・防衛部分)」(最終更新時点:2024-04-11 17:30)から紹介したい。同部内資料の解説は、共同声明の行間を読む上でも参考となろう。
例えば同部内資料によると、声明にある「尖閣諸島に対する日本の長きにわたり、かつ、平穏な施政」のうちアンダーライン部分の文言は、過去の日米首脳間の共同文書で用いられた例がなかったそうである。日本側からするとこの文言が入れられたことは外交的成果と言えるのである。
最後に解説の締めくくりとして、この宣言が周辺国に与える影響について佐藤 優 氏(作家、元外務省主任分析官)の以下のコメントを紹介する。
まず、この共同声明に「価値観」と「民主主義」という言葉が一度も出てこないことだ。未来のためのパートナーシップにおいては、民主主義という共通の価値観を基盤にするというよりも、互いの国益の極大化する均衡点を見つけるという地政学的要因が強まっている。共同声明において〈日米協力の新たな時代において、我々は、グローバルな事象がインド太平洋の安全保障と安定に影響を及ぼし、我々の共有する地域における動向が世界中に波及していることを認識する。そこで我々は、日米両国及び世界の利益のために現在及び将来の複雑で相互に関連する課題に対処するという目的に適うグローバルなパートナーシップを構築するため、あらゆる領域及びレベルで協働している。我々は、同盟協力が新たな高みに達するに当たり、パートナーシップのグローバルな性質を反映すべく関与を拡大している〉と記されている。
インド・太平洋地域(原文ママ)(かつての大東亜栄圏にほぼ重なる)に日本と米国が共存・共栄できるシステムを構築していくという意思の表明だ。中国と北朝鮮は、日米による「未来のパートナーシップ」とは、21世紀型の大東亜共栄圏であるという認識を抱き、激しく反発するであろう。
【出典】「佐藤優のウチナー評論〈843〉日米首脳共同声明」『琉球新報』2024年4月13日第1版第3面。
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『軍事民論』第717号…18頁
日米「2+2」共同発表(2022年1月7日)に込められた含意―防衛省部内資料より
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