台湾有事と関連条約―基礎文献と政府見解関連文書
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『軍事民論』第755号(2025年5月19日)…7頁。
台湾有事と関連条約―基礎文献と政府見解関連文書
(発刊趣旨)「台湾有事は日本有事」……。この問題になるといきなり米軍の参戦、自衛隊はどこまでそれに協力するかという話になるのが我が国の言論状況である。しかし、中国が日米の介入をかわすために在日米軍基地等への攻撃を避け、台湾のみに侵攻するというシナリオは起こり得る。
台湾単独有事シナリオの場合、米台間、日米間、日中間、米中間の様々な関連諸条約(及び行政協定)が絡み合い、各国の行動を規制し合うのだ。
本号では、そもそも論に立ち返って、これら諸条約が台湾有事にどのような対応を認めているかを紹介したい。
【台湾有事に関わる政府文書】
〔日米間〕
「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」(1960年1月19日)*抜粋
「条約第六条の実施に関する交換公文」(1960年1月19日)*抜粋
「極東の範囲」(1960年2月26日「政府統一見解」)
「佐藤・ニクソン共同声明」(1969年11月21日)*抜粋
〔日中間〕
「日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明」(1972年9月29日)*抜粋
〔米中間〕
「上海コミュニケ(ニクソン米大統領の訪中に関する米中共同声明)」(1972年2月27日)*抜粋
「中華人民共和国とアメリカ合衆国の外交関係樹立に関する共同コミュニケ」(1979年1月1日)
〔米国政府〕
「台湾関係法」*抜粋
「台湾関係法」署名の際の米国大統領声明(1979年4月10日)*抜粋
【日中平和友好条約と台湾有事】
〔解説〕台湾問題は日中平和友好条約締結において日中間の懸案であった。
日中平和友好条約時において我が国が台湾有事をどのように想定していたのかを示した「日中平和友好条約に関する擬問擬答集」(1976年9月28日 外務省)から関連箇所を抜粋・紹介する。
問61 中国の「台湾武力解放」は覇権行為ではないのか。
問90 日中条約の締結により、台湾地域を極東の範囲から除くべきではないか。
【日米安保と台湾有事】
〔解説〕台湾単独有事が発生した場合に問題となるのが、当該有事が日米安保の適用(それに伴う事前協議)の対象となるのかということだ。即ち日米安全保障条約第6条の「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」と定めるところの「極東」に台湾が含まれるかだ。
この点に関する日本政府の見解について、同じく「日中平和友好条約に関する擬問擬答集」から抜粋・紹介する。
問93 極東の範囲についての政府統一見解によれば、「極東」とは、日米両国が「共通の関心」を有する区域ということになるが、台湾地域は日本も関心を有する地域であるのか。
問95 台湾をめぐり武力紛争が生じ、米側から事前協議を求めてくる場合にいかに対応するか。
【「極東の範囲」と台湾】 〔解説〕上述の想定問答から台湾が日米安保条約の適用範囲であることが明らかにされたが、これは台湾が「極東」に含まれるという理由からだ。
なぜ「1つの中国」を認めた日中平和友好条約締結後も台湾が「極東」含まれたままなのか、この点についての政府の見解を示したものが「米中共同コミュニケ想定問答」(昭53・12・12 外務省アジア局 アメリカ局 条約局)だ。
ここから関連箇所を抜粋・紹介する。
問3 米中正常化によつて一年後には米台防衛条約が消滅することになったが、この場合当然台湾地域は日米安保条約の極東条項から削除されることとなると考えるが如何。
【我が国周辺有事と在日米軍基地使用】
〔解説〕川名 晋史「在日米軍基地」(中公新書 2024年1月25日発行)108~111頁からその要旨をまとめたものである。
同書では、我が国周辺有事において米軍(在朝鮮国連軍も含む)が在日米軍基地が使用できるか否かのチャート図と共に解説を行っている。このうち本号では、理論上使用が不可となるシナリオを紹介する。
【みんろん・トピックス】
「台湾海峡有事が法律上重要影響事態あるいは存立危機事態に該当し得るかに関する統一見解」(2015年9月9日 防衛省 内閣官房)
〔解説〕安保法制の国会審議で示された政府統一見解。出典は「【資料】衆議院及び参議院の『我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会』に提出された政府統一見解等」『立法と調査』(参議院事務局企画調整室)第372号(2015年12月14日)115~116頁。本資料は、政府統一見解の一覧とその全文を掲載したもの。なおこれら政府統一見解は委員会に提出されたため、国会議事録からは知ることができない。
【関連バックナンバー】
『軍事民論』第677号 *ここをクリック
「日中平和友好条約」逐条解釈―「日中平和友好条約に関する擬問擬答集」(外務省)より
『軍事民論』第695号 *ここをクリック
尖閣問題を巡る外務省の自問自答―「日中平和友好条約に関する擬問擬答集」(外務省)より
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