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  • 軍事問題研究会編集

ニュース:内閣法制局、安保3文書に意見なし―3文書は有識者提言前に完成か?

更新日:2023年1月29日

 我が国の戦後防衛政策の大転換となる反撃能力が導入が決定された安保3文書―国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画―に対して、内閣法制局が意見を付けなかったことが、本会の情報公開請求に対して同局が開示した応接録(下図)から明らかになった。

 我が国の戦後防衛政策の大転換にも関わらず、内閣法制局による承認の経緯は極めて驚くべきものだ。

 即ち担当省庁からの相談が、文書作成途中から行われていないのである。

 応接録には添付文書として3文書の完成版が添付されていた。即ち文書が完成してから担当省庁は内閣法制局に意見照会を行ったのである。

 なお応接録によると相談日の始まりが11月28日。3文書作成に先立つ、いわゆる有識者会議(国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議)が提言を総理に提出したのが11月22日。提言提出前日の有識者会議最後の会合で岸田総理は「この有識者会議の報告書を踏まえつつ、与党と相談しながら、政府として検討を進めてまいります」と発言しているが、この時点で3文書は既に完成していたと考えた方が自然であろう。

 このような政府の先走りに対する歯止めとなるのが内閣法制局の役割であるにも関わらず、国会審議において憲法論争を巻き起こすことが必至のテーマに対して、内閣法制局のチェックはほとんど機能していなかったのである。

 過去の内閣法制局によるチェックの経緯について言えば、例えば、現行の国家安全保障会議設置法の制定に当たっては、担当省庁は法案作成段階から内閣法制局に意見を求め、同局は細かいダメ出しを行っている

【上図:国家安全保障会議設置法案の作成段階における内閣法制局参事官の口頭での指摘事項を担当省庁まとめたメモ】


 今回の経緯を見ると、今後、安全保障問題に関する憲法上のチェック機能を内閣法制局に期待することはできなくなったと言える。

【引用資料のご紹介】

(資料番号:23.2.1-8)「応接録〔件名〕「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」及び「防衛力整備計画」について」(相談年月日:2022年11月28日~12月15日)…105頁

 * PDFファイル(テキスト・データ)。

 ** 応接録はHPで紹介した1頁のみで、これに安保3文書が添付されています。


【関連資料のご紹介】

 以下の論文を読むと、担当省庁が安保3文書の作成途中で内閣法制局の意見を求めなかった不可解さが理解できます。

(要旨)

 筆者は、平成二一年九月の政権交代を挟んで二年間、研究者としては成田頼明博士以来約四〇年振りに、内閣法制局で勤務した。この間、憲法を始めとする現行法令の解釈を担当する意見部(第一部)に在籍しつつ、法律・政令案の審査を担当する審査部(第二~四部)にも特命を受けて配属され、意見事務・審査事務の双方を経験する機会を得た。

 以下では、筆者が一研究者として受けた法制局の印象を紹介した後、筆者が一実務家として感じた公法学の課題を呈示することとしたい。


(資料番号:23.2.7-1)「内閣法制局の印象と公法学の課題」『北大法学論集』第61巻第6号(2011年3月31日発行)掲載


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