敵基地攻撃能力を言い換えた「反撃能力」について、今年の『防衛白書』は、「弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において、わが国が有効な反撃を加えることを可能とする」(213頁)と説明している。
字句通り解釈すれば、弾頭ミサイル防衛で対処しきれない場合にのみ相手領域攻撃を行うとの説明だ。
しかしこれに反して、航空自衛隊幹部学校航空研究センターが作成した部内研究メモは、ウクライナ紛争から得た教訓として、防空と反撃(相手領域攻撃)は統合して行うことを、また反撃の対象はミサイル・ランチャー(注)に留まらず、潜水艦・空母・AWACS等も対象とすべきと提言している。
まず提言の紹介の前に、空自の戦術概念の理解が必要なので、「航空作戦」(航空自衛隊教範02-1)からこれについて説明したい。
空自では、航空作戦を「戦略的な航空作戦」と「戦術的な航空作戦」に大別し、後者は更に「対航空」「航空阻止」「近接航空支援」「航空偵察」「航空輸送」に区分される。
このうち主に航空戦闘を担うのが「対航空」(CA:Counter Air)であり、これは更に2つに区分され、それぞれ以下の通り定義されている(同教範8頁)。
「攻勢対航空」(OCA:Offensive Counterair)
敵の航空戦力に対し、主として地上にある敵の航空機、防空システム及び敵の航空戦力を支えている全てのものを攻撃して撃破する作戦である。
「防勢対航空」(DCA:Defensive Counterair)
友軍の部隊、設備品及び施設等を攻撃する敵航空機を探知、識別、要撃して撃破する作戦である。
航空自衛隊の作戦においては、防空がこれに該当する。
以上から分かる通り、攻勢対航空とは敵基地(領域)攻撃作戦であり、防勢対航空とは国土防空作戦なのである。なお同教範は2016年6月の制定なので、昨年12月に策定された安保3文書で新たに保有が認められた「反撃能力」が反映されていない。このため同教範は、攻勢対航空を空自の実施する航空作戦に含めていない(同教範10頁)。
それでは、航空研究センターがウクライナ紛争からどのような教訓を得て、上述の提言に至ったのか、部内研究メモである「研究メモ(4-7)ロシア・ウクライナ戦争に係るOperational Assessment」(2022年7月21日 航空自衛隊幹部学校航空研究センター)は概略以下の通り説明する。
(注) 『防衛白書』の解説コラム(213頁)に掲載された下図を見る限り、反撃能力の対象は、敵領土にあるミサイル・ランチャーだと国民は「理解」(誤解)することだろう。
****** 続きを読まれたい方は ******
□ 頒価 ¥200円(前金制)
下記本会口座までご入金戴くと共に、本会アドレス(ttn5rhg28d@mx2.ttcn.ne.jp)まで「軍問研ニュース8月31日配信希望」とお申し付け下さい(本誌の送付はご入金確認後となります)。
□ 領収証
発行しませんのでご注意下さい。
ただし本誌又は本会ニュースのバックナンバーを合わせて¥500円以上をご購入の場合は、お申し付け戴ければ発行致します。
(振込先:郵便振替)
【郵便局でのお振込みの場合】
口座番号:00110-1-44399
加入者名:軍事問題研究会
【銀行またはインターネット・バンキングでのお振込みの場合】
■銀行名:ゆうちょ銀行
■金融機関コード:9900
■店番:019
■預金種目:当座
■店名:〇一九店(ゼロイチキユウ店)
■口座番号:0044399
■加入者名:軍事問題研究会
Comments