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ホルムズ海峡タンカー護衛論の陥穽―危険な海域への航行を民間船舶に強制するのか!?

  • 軍事問題研究会編集
  • 6 日前
  • 読了時間: 3分

 米国・イスラエルによるイラン攻撃によりホルムズ海峡の事実上の封鎖が続き、その打開策として海軍によるタンカー護衛論が浮上している。

 これについて我が国メディアは、自衛隊の派遣に関する国内法上の課題を取り上げて解説しているが、そもそも民間船舶が安全が確保されない海域を航行するのかという根本的な問題を見落としている

 事実、日本の海運大手3社はイエメンの親イラン武装組織フーシ派による攻撃への懸念から2024年1月までに紅海での運航を停止している(Yahoo!ニュース)。フーシ派より更に激しい攻撃が予想されるホルムズ海峡を民間船舶が通行してくれると考えるのはどういう根拠があってのことであろうか。

 そもそも紛争地域に自社の社員を派遣しないマスメディアが、護衛がつけば民間船舶が危険な海域を当然航行するという前提でこの問題を論じているのが不可思議だ(人権意識の欠如か?)。

 結論を言えば、軍事力によってホルムズ海峡の航路を確保することは無理だと言える。

 現在イラン攻撃に参加しているAbraham Lincoln空母打撃群は、ホルムズ海峡の外であるアラビア海に展開している(USNI News Fleet and Marine Tracker: March 23, 2026)。つまり世界最強と言われる米空母打撃群ですらイランによる攻撃を警戒してホルムズ海峡を通過できないわけだ。いわんや石油タンカーに随伴してイランによる攻撃を排除など到底不可能であろう。

 また米海軍と関係の深いU.S. Naval Instituteからのメールマガジン(3月25日)で「Rethinking the Strait of Hormuz」と題する、2012年に『Proceedings』誌に掲載された記事が紹介されている。

 同記事が掲載された当時の状況は、米国による経済制裁に対する報復としてイランがホルムズ海峡の閉鎖を示唆し、緊張が高まった時期であった。

 同記事の結論は、イランのA2/AD能力に対抗して米海軍力がホルムズ海峡をsea controlすることはできないので、同海峡のsea controlはイランに委ね、米海軍は北アラビア海で作戦展開せよというものだ(正に現在の米海軍の作戦状況がその通り)。イランのA2/ADは当時より更に向上しており、その一方で米海軍の戦力は衰退している。

 なお自民党の長島 昭久 衆院議員(安全保障調査会副会長)が、ホルムズ海峡護衛のために自衛隊を派遣する特別措置法の制定を提案しているが(Yahoo!ニュース)、肝心の石油タンカーが通行してくれなくては意味がない。

 もし現在の戦争状況下で石油タンカーを通行させようとするなら、石油タンカーを強制従事(徴用)させる特措法とセットでなければ実効性がない。

 そんなことをしなくとも、イランは非敵対国にはホルムズ海峡の通行を許可すると表明しているのだから(Bloomberg)、それに従った方が安全・確実な石油ルートの確保につながるはずだ。

【関連情報】

ホルムズ海峡はどうしたら再開できる? 護衛の難しさをビジュアル解説

(注)出典のリンクは会員のみ配信。


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自衛隊ホルムズ海峡派遣と武力紛争法―海自指揮幕僚課程テキストよりここをクリック

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 以 上

 
 
 

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