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ニュース短信:北朝鮮核ドクトリンの評価が異なる2つの防研部内研究

軍事問題研究会編集

 防衛省・自衛隊のシンクタンクである防衛研究所は、「防衛研究所の調査研究に関する達」に基づき部内研究報告書を毎年作成しているが、その殆どが部外には公表されることがない。

 本会の情報公開請求で防衛省が最近、令和4年度の部内研究報告書を開示したのだが、その中で北朝鮮の核ドクトリンに関して相反する見解を示している報告書があったので紹介したい。それが以下の2つの研究報告書だ(いずれも研究実施期間は2022年4月~2023年3月)


①「2022年を中心とする北朝鮮による強制外交の展開」(防衛研究所令和4年度基礎研究成果報告書)

②「戦術核兵器の役割に関する比較検討―パキスタン、北朝鮮、ロシアを事例として」(防衛研究所令和4年度所指定研究成果報告書)


 北朝鮮の核ドクトリンにおいて注目されていることの1つに、先行不使用(NFU: No First Use)が採用されているかという点がある。先行不使用とは、通常戦が発生しても相手より先に核兵器を使用しないとする方針である。

 北朝鮮の核ドクトリンが初めて対外的に表明されたのが、2013年4月1日に採択された最高人民会議法令「自衛的核保有の地位を一層強化することについて」である。

 この法令を巡って①報告書は「NFUを曖昧にしていた」(2頁)と評価するのに対して、②報告書は「先行不使用(NFU)の宣言である」(6頁)している。

 また核兵器の標的について②報告書は、通常戦力面での不利を相殺するために「米韓の通常戦力部隊や指揮系統などの軍事目標」(7頁)としている。これに対して①報告書は、戦争開始前は韓国軍(即ち抑止が目的)であるが、抑止が失敗して戦争が始まれば都市(ソウル)が標的になるとしている。

 このように同じ防研所内でも、(当然と言えば当然だが)研究者によってその評価が異なるのである。








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