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  • 軍事問題研究会編集

ニュースの背景:特定秘漏洩事件が海自OBに与えた影響

 2022年12月26日、海上自衛隊情報業務群1司令(1等海佐)が元自衛艦隊司令官に対して特定秘密を漏らした事案について、防衛省が調査結果とその処分を公表。

 その後、再発防止策として以下の措置が講じられた。

① 情報部署の職員はOBに対するブリーフィングを禁止。

② 情報部署以外の職員も、OBに対しブリーフィングをする場合、事前許可及び実施結果を報告。

 こうした処置に対して、防衛省から情報が取れなくなったと、海自OBである武居 智久 元海上幕僚長(海将)が愚痴とも取れる呟きを専門誌に寄稿している。


 一昨年12月26日、防衛省は、高度な情報保全が求められる特定秘密が含まれる情報を退職海上自衛官(海自OB)に漏らしたとして、現職海上自衛官を懲戒免職の処分にし、特定秘密保護法違反などの疑いで書類送検した。特定秘密情報の漏洩は国家防衛の根幹を危うくする可能性を杏定できず、厳しい処分はやむを得ない処置であった。しかし、この事件は海上自衛隊と海自OBの間に高く厚い壁を作ってしまった。事件以後、現職隊員と海自OBとの接触は新たに定められた規則に基づけば実施できるものの、海自OBは後輩達の事務手続きの負荷や事後処理の煩雑性を慮って海幕や部隊へ次第に足を運ばなくなっていった。それ以上に、海自の将来計画や防衛力整備の方向性に関する情報は、決して機微とは思えず、またすでに公開されている情報の範囲と考えられる内容であっても、海幕や部隊からほとんど流れてこなくなった。

【出典】本会会員には配信済み


 しかし、「すでに公開されている情報の範囲と考えられる内容」であれば、自分で調べれば分かるはず。これまで海自OBはそうしたことも後輩に調べさせて、講演や執筆に勤しんでいたのだ。

 再発防止策のおかげで、現職隊員はOBからの調べ物依頼から解放されて一息ついているのではないだろうか。


【関連ニュース】

特定秘密の漏洩は過失でも刑事罰

 防衛省は4月26日、陸上自衛隊2等陸佐を特定秘密保護法違反の疑いで、警務隊に告発、また、特定秘密保護法に違反する運用をしたとして、海上自衛隊の40歳代の1等海佐ら4人を停職6日などの懲戒処分にしたと報じられている(自衛官5人が特定秘密保護法違反 1人を刑事告発へ、公表は2例目)

 海自の事案は「特定秘密保護法に違反する運用」という言い回しだが、特定秘密を取り扱う資格のない者にそれを取り扱わせたのであるから、こちらも漏洩だ。

 特定秘密の漏洩には、省秘の漏洩(「自衛隊法」第118条)にはない、過失による刑事罰が認められている(「特定秘密の保護に関する法律」第23条第4項)。より高度な情報保全が求められる特定秘密には、刑事罰の威嚇により、秘密保全をより徹底させる必要性があるからだ。

 陸自の事案に刑事告発を行いながら、海自の事案には行わないことはダブル・スタンダードであり、防衛省は「刑事訴訟法」第239条第2項(官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない)に違反している。


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