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イランによるホルムズ海峡機雷封鎖は可能か?―国際法、軍事能力を巡る防衛省・自衛隊部内資料での論考―

 イラン革命防衛隊の海軍司令官が、原油輸送の要衝であるホルムズ海峡を封鎖することもあり得ると報じられています(「イラン、ホルムズ海峡の封鎖可能」)。この問題の考える上で参考となる本誌既刊をご案内申し上げます。


『軍事民論』第551号(2014年6月30日発行)…8頁

イランによるホルムズ海峡機雷封鎖は可能か?

―国際法、軍事能力を巡る防衛省・自衛隊部内資料での論考―


 集団的自衛権をはじめとする安全保障法制の見直しを協議する自民・公明両党による「安全保障法制整備に関する与党協議会」の第2回会合(5月27日)で政府が提出した、現行の憲法解釈・法制度で対処に支障がある事例をまとめた「事例集」では、「《事例14》国際的な機雷掃海活動への参加」が取り上げられている。

 これは、「原油を積んだ日本の船舶が多数航行する重要な海峡(例えばホルムズ海峡)の近隣で武力攻撃が発生。攻撃国による武力攻撃の一環として、機雷が敷設され、海上交通路が封鎖された。このような状況で、国連や各国から国際的な機雷掃海活動への参加要請があった」という想定の下に、機雷掃海を容認しようというものである。

 当初、自民党はこの事例を集団的自衛権の課題として取り上げていたが、集団的自衛権の行使で掃海を行っていても、途中で国連安保理決議が出れば国際法上は集団安全保障に切り替わるため、「国連決議が出たとたんに同じ活動ができなくなるのはおかしい」との理屈で集団安全保障でも可能にしようとの提案を公明党に行い、同党の反発を受けたと報じられている。

 この事例については、国際法の観点からすれば、集団的自衛権では参加できないが、集団安全保障になれば参加するという順番でなければ本来おかしい。なぜなら事例がいう「攻撃国」の確定は、国連安保理が「平和に対する脅威、平和の破壊または侵略行為の存在を決定」(国連憲章第39条)した後に定まるからである。集団的自衛権行使の段階では、いずれが攻撃国・被攻撃国であるかが未確定だが、安保理決議後はそれが確定されるから違法な武力行使に荷担する心配はなくなる。

 機雷掃海を可能とするのであれば、まず集団安全保障の課題として議論を始めるのが筋であろう。

 これにとどまらず、機雷掃海活動の問題に関しては極めて粗雑な議論が横行している。

 ホルムズ海峡の機雷封鎖といっても、機雷がどこに敷設されたかで、自衛権が行使できない場合も存在するのである。

 この事例は、イランによる機雷封鎖が念頭に置かれているが、仮にイランが武力紛争の際に自国への侵入を封鎖するために領海内に機雷を敷設した場合、他国の主権を侵害したわけではないので、この機雷を掃海することは、イランの主権の侵害となる。従って他国は、個別的ないし集団的自衛権のいずれに基づいても機雷掃海は行えない。また他国の主権を侵害していないので、機雷の敷設それ自体は集団安全保障の対象にもならない。

 こうした点を認識せず、やみくもに機雷掃海を行えば、機雷掃海そのものが違法な武力行使となってしまうのである。

 上記の議論に資すために本号では、イランによるホルムズ海峡機雷封鎖に関して論考している防衛省・自衛隊部内資料から、国際法及び軍事能力に関わる部分を抜粋し、4つの小見出しに分けて紹介する。

 「① ホルムズ海峡封鎖の国際法的側面」は、ホルムズ海峡が抱える国際法上の複雑な問題を整理し、その封鎖に関する国際法上の妥当性の論考である。

 また「② ホルムズ海峡封鎖の軍事的可能性」は、イランによるホルムズ海峡封鎖が軍事的に可能であるのかの論考である。ここでは、「イランはホルムズ海峡を封鎖するか」に対する解答も示されている。

 イランによるホルムズ海峡機雷封鎖に関しては、西側諸国がそれを掃海する能力があるのかが焦点となる。

 イランは、核開発疑惑に対する欧米による経済制裁に対抗して、2011年12月にはホルムズ海峡の封鎖を示唆した。

 これに対抗して米国が同盟各国を募って開催(2012年9月16日~27日)したのが、「米主催国際掃海訓練」(「IMCMEX12」)であった。日本の掃海部隊の他、英、仏、伊、蘭、加、豪、ニュージーランド、ヨルダン、イエメン、エストニアなど30ヵ国以上が参加した。

 同訓練は、イランによるホルムズ海峡封鎖を牽制する狙いがあると目されていたが、その訓練想定が「③ 『米主催国際掃海訓練』訓練想定」である。読者は、意外なその訓練シナリオに軽い驚きを覚えるであろう。

 「④ 機雷戦を巡る米海軍の見解」は、「IMCMEX12」の一環として開催された掃海シンポジウムで米海軍が発表した、平時・戦時における機雷敷設の合法・違法に関する米海軍の見解を、参加した海上自衛官が取りまとめたものである。イランによるホルムズ海峡封鎖を強く牽制していた米海軍が、機雷敷設の合法性を広く認めていることは予想外であった。

 なお出典であるが、①②が「イラン核開発問題とペルシャ湾岸の安全保障環境」(防衛研究所平成24年度基礎研究成果報告書)、③④は、IMCMEX12に参加した海自第51掃海隊が作成した「米主催国際掃海訓練実施報告書」からの抜粋である。


















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