米国・イラン間の関係悪化からペルシャ湾で緊張が高まる中、船舶を対象とした攻撃事案が生起し、2019(令和元)年6月には日本関係船舶の被害も発生したことを受けて、政府は日本関係船舶の安全確保を名目に同年12月27日に自衛隊を派遣する閣議決定を行った。
この閣議決定を受け自衛隊は、翌2020年1月20日よりオマーン湾、アラビア海北部及びバブ・エル・マンデブ海峡東側のアデン湾の三海域の公海(沿岸国の排他的経済水域を含む)での情報収集活動を行っている。
さて政府は、この地での情報収集を一貫して「活動」と称して、軍事行動のイメージの払拭に余念がないが、海上自衛隊ではこの情報収集を「軍事作戦」と位置付けていることが本会の情報請求により防衛省が開示した文書から明らかになった。
その文書が「中東地域における日本関係船舶の安全確保に必要な情報収集活動(SHAMSHIR 20)作戦計画第1号」(自艦隊作第268号(令和2年1月31日)別冊)だ。SHAMSHIRとは、中東で見られる、わずかに曲がった細身の片刃の刀剣を意味するものと思われる。
自衛隊の統合運用に関し、使用する用語の意義を明らかにすることを目的(前文)とする「統合用語集」(統合訓練資料1-5)は、「作戦」を以下の通り定義している。
1 広義には、軍隊(自衛隊)が与えられた任務達成のために遂行するあらゆる軍事行動(防衛行動)をいう。
2 狭義には、ある目的を達成するまでの一連の戦闘行動をいい、捜索、攻撃、防御、移動、機動等及びこれに必要な後方活動を含む。
これまでの本会の情報公開請求で防衛省が開示した自衛隊の行動計画に関する内部文書の中で、「作戦」という用語が使われていたのは、「海上警備行動等(不審船舶対処)に関する経過概要及び所見」(自艦隊(作)第301号(11.4.23)別冊)だけだ。この文書は、海自が創設以来初めて海上警備行動を行った能登半島沖不審船事件に関する報告書である。
本誌第658号(2020年10月5日発行)「中東派遣部隊の『情報収集活動』はイランに対する偵察である」で、情報集活動はイランに対する偵察=軍事活動であると指摘したことを作戦計画第1号は裏付けてくれたと言える。
【関連バックナンバー】
本誌第658号(2020年10月5日発行)「中東派遣部隊の『情報収集活動』はイランに対する偵察である」
頒価 ¥300円(全文4頁。PDFファイル)
ご注文はttn5rhg28d@mx2.ttcn.ne.jpまでお申し付け下さい。
【「海自中東派遣関連資料集(2)」(2022年)】
政府は、これまで中東海域で情報収集活動にあたってきた自衛隊の護衛艦1隻を撤収させると決定、また活動を終了させることも閣議決定しました。
本会は、同活動に関して防衛省に情報公開請求を行っており、最近同省より関連する行政文書計343件の開示を受けました(文書リストはここをクリックするとPDFファイルでダウンロードできます)。
ここから資料性の高いものを抜粋してまとめたのが、以下の資料集(資料は全てPDFファイル)です。
なお情報公開請求により開示されたものですので、資料の一部には不開示(墨消し)箇所がございますので、予めご承知おき下さい。
「海自中東派遣関連資料集(2)」(2022年) *詳細はここをクリック。
ダウンロード:本会会員¥1,000円/その他¥2,000円
* CDをご希望の場合、¥500円加算されます。
** お申し付け戴ければ領収証を発行致します。
資料1:「国会用想定集(令和元年11月6日ver.)」…83頁 *抜粋はここをクリック。
資料2:「対外想定(情報収集態勢強化のための自衛隊アセットの活用)」…21頁
資料3:「我が国に関係する船舶の安全確保に関する政府の取組について」(2019年12月 内閣官房 外務省 防衛省)…23頁
資料4:「中東地域への自衛隊派遣検討に関する国会・報道等での主な論点」…27頁 *抜粋はここをクリック。
資料5:「中央海軍/第5艦隊/CMF(連合海上部隊)/CTF Sentinelの指揮統制図と連絡官等の配置」…2頁
資料6:「【対外応答要領】米国「海洋安保イニシアティブ」の下での司令部発足」…4頁
資料7:「『IMSCに参加しない』が『米国と連携する』ことについて」…4頁
資料8:「IMSC不参加想定」…1頁
資料9:「ジブチ共和国における日本国の自衛隊等の地位に関する日本国政府とジブチ共和国政府との間の交換公文」(2009年4月3日)…24頁
資料10:「派遣飛行隊定時報告」…3頁
資料11:「派遣艦艇活動報告」…3頁
以 上
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