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  • 軍事問題研究会編集

ニュースの背景:巡航ミサイルは「反撃能力」にならない―戦例が示す「巡航ミサイルは先制第一撃兵器」

更新日:2022年9月4日

(2022年9月4日修正)

 政府が導入を決めている長射程巡航ミサイルについて、1000発以上の保有を検討していることがわかったと報じられている(長射程ミサイル、「反撃能力」1000発以上の保有検討…中国との数の格差埋める狙い)。台湾有事も念頭に、南西諸島から九州を中心に配備し、弾道ミサイルを多数配備する中国との「ミサイル・ギャップ」を埋る狙いがあるという。

 しかし巡航ミサイルは、敵の攻撃に対する反撃には不向きな兵器である。

 昨年9月に北朝鮮が試射に成功した長距離巡航ミサイルは、1,500㎞先まで飛ぶのに7580秒(2時間6分20秒)かかっている(北朝鮮が新型巡航ミサイル発射 日本を射程、1500キロ飛行)。一方、弾道ミサイル(例えば北朝鮮「ノドン」ミサイル)であればこの距離をおよそ10分程度で着弾する。

 従って敵からの弾道ミサイル攻撃に反撃して巡航ミサイルを発射しても、ほとんど効果が期待できないのである。我の巡航ミサイルが着弾する頃には、敵の弾道ミサイルは既に発射された後だし、それどころか反撃する前に敵の弾道ミサイルにより我の巡航ミサイルが破壊されてしまうことすら起こり得る。

 このように、目標までの着弾に時間がかかるというのが、巡航ミサイルの根本的な欠点なのである。そこでこの欠点を埋め合わせるために必然的に用いられるのが、先制第一撃による攻撃である。事実、下図が示す通り、米軍が過去にトマホークを用いた軍事作戦を見れば、いずれも米軍から攻撃が開始されたものばかりだ。

 政府が台湾有事も念頭に巡航ミサイルを整備するのであれば、同有事は日本からの巡航ミサイルの発射で火ぶたが切られることになろう。

米軍の作戦で使用されたトマホーク巡航ミサイルの主な事例

【出典】「『トマホーク』は米大統領の実用戦略兵器だ」『軍事研究』2018年5月号137頁。

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