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南極の氷の配布はお手盛り―防衛省に配布の基準なし

軍事問題研究会編集

 鬼木 誠 防衛副大臣が、海上自衛隊砕氷艦「しらせ」が南極から持ち帰った氷を自身の選挙区に配布したことが問題となったことは記憶に新しい(防衛副大臣、南極氷を選挙区配布)

 本会はこの事案を受けて、南極の氷の配布先リストを情報公開請求し、防衛大臣・副大臣・政務官・補佐官が受領していることを明らかにした(南極の氷は防衛大臣・副大臣・政務官・補佐官が受領―防衛省が配布先リストを開示)

 開示された配布先リストを見て、どのような基準で配布先が決まったのかを明らかにするために、配布の根拠となる法令及び配布先の基準について更に情報公開請求を試みた。

 それに対する開示決定では、配布の根拠となる法令は開示された一方、配布先の基準は文書不存在であった。

 即ち配布はお手盛りで良いということなのである。そうなると誰が配布先を決めたかという新たな問題が出てきた。これについては更に追求していきたいと思う。

 配布先の基準がないという以上に問題なのが、配布の根拠となる法令である。開示決定が示した条項は噴飯ものだ。

 開示決定が示した根拠は、自衛隊法第100条の4(南極地域観測に対する協力)自衛隊施行令第126条の15(南極地域観測に対する協力の範囲)であったのだ。

 素直にこれら条文を読めば、これらの条項は自衛隊が南極観測の協力をする根拠とその協力範囲を定めたものであることが理解できよう。そもそも自衛隊法第100条の4は、1965年に我が国の南極地域観測の再開に際して、南極基地への輸送業務の担当を海上自衛隊が海上保安庁から引き継ぐことで設けられた条項なのである(行財政問題調査研究会「防衛二法の解説」(全国会計職員協会 1986年1月10日初版発行)248頁)

 自衛隊が南極の氷をお土産に持ち帰り配布するのは、南極地域観測に対する協力に値しない。防衛省のこの行為には法令上の根拠はないのである。


【開示決定通知書の抜粋】


自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)

(南極地域観測に対する協力)

第百条の四 自衛隊は、防衛大臣の命を受け、国が行なう南極地域における科学的調査について、政令で定める輸送その他の協力を行なう。


自衛隊法施行令(昭和二十九年政令第百七十九号)

(南極地域観測に対する協力の範囲)

第百二十六条の十五 法第百条の四の規定により南極地域における科学的調査について協力を行なう範囲は、次の各号に掲げるとおりとする。

一 船舶及び航空機により、本邦と国が南極地域に設ける基地との間において、同地域における科学的調査に従事する者及びその調査を行なうために必要な器材、食糧その他の物資を輸送すること。

二 南極地域における科学的調査を行なうために必要な雪上車を設計し、及び試験すること。

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